前回、NOと言わせないための心理術として「ダブル・バインド・テクニック」を紹介しました。
それに引き続き、今回もNOと言わせない、YESを引き出す心理術「イエス・セット」を紹介したいと思います。
「イエス・セット」も、前回同様に催眠術で用いられる手法なのですが、もちろん普通のコミュニケーションでも使えます。
このテクニックは、「最終的にYESと言わせたい問いかけ」の前に、「必ずYESが返ってくる問いかけ」を複数回することで、
惰性で「YES」を引き出す、と言うものです。
惰性でYESなんて言うわけない!と思うかもしれませんが、ナンパ師のトークの根幹はこういうものだったりします。
A:「こんばんは。今一人?」
B:「はい」
A:「今日はさむいね」
B:「そうですね」
A:「こういう寒い日は、なんか温かいもの食べたいよね」
B:「そうですね」
A:「近くに美味しいお店知ってるから一緒行こうよ。あたたまれるよ。」
B:「じゃあ、いきましょうか。」
とまあ、こんな感じ。
惰性で「YES」を引き出す、と書きましたが、すでに何度も登場している「一貫性の原理」がやはりこのテクニックの根幹です。
「YES」の回答は、肯定や共感。何度かそういう反応をしているうちに、「この相手の問いかけには肯定・共感するもの」という一貫性ができてきます。
これができてしまうと、一旦考えないと反論にうつれないので強力なのです。
でも、そもそも人の問いかけにほとんど「NO」で返してくるような人もいますよね。
心の壁が厚い人というかなんというか。
そこで、タイトルにある「ノーセット」が役に立つわけです。
A:「今日はさむいね」
B:「べつに・・・」
なんてかえってきたときは、その後連続させる質門も「NO」が帰ってきそうな質門に変えていき、最後の問いかけでも
A:「美味しいお店知ってるから誘おうと思ったけど、興味ないもんね?」
という具合に、「NO」で答えるとこちらに都合がよいようにきくことで、相手を誘導することができるのです。
ちなみに、この「イエス・セット」、催眠術などで用いられると書きましたが、
そもそも、天才催眠療法士と呼ばれたミルトン・エリクソンが考案した、クライアントとの会話の中でつかっていたテクニックなのです。
それが後に、ミルトン・エリクソンのいろいろなテクニックが「ミルトン・モデル」として体系化され、
催眠療法のみならず、コミュニケーションの世界で使われています。
心理学を学んでいく上ではおそらく外すことのできない人物のひとりが、ミルトン・エリクソン。
彼についても、そのうち詳しく書いてみたいと思っています。