前回、心理術入門と題して「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」を解説してみましたが、
それと並んで語られることの多いテクニックが、この「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」です。
一貫性を利用して要求を通すフット・イン・ザ・ドア・テクニックを使いこなそう
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは?
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」とは、簡単に説明すると、
「承諾させたい要求よりも低い要求をして、承諾させたのちに、本来の高い要求を行う」
というものです。
別の名前では、「段階的要請法」とよばれることもあります。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックの実験
実際に行われた実験では、とある、交通安全の看板(しかもクソダサい)の設置を依頼しました。
通常にお願いしてしまうと、
A:「お庭に交通安全の看板を設置させてもらえませんか?」
B:「いやだよ」
となるようなものでも、事前に
A:「家に交通安全のステッカーを貼ってもらえませんか?」
B:「別にいいよ!」
多くの人がOKするような内容に関するお願いを一度してOKをもらっておくことで、
後日改めて看板の設置に関する依頼をした場合にも、
A:「お庭に交通安全の看板を設置させてもらえませんか?」
B:「別にいいよ!」
という回答が得られるようになる、というものです。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックのしくみ
このテクニックは、
- 一旦自分がした行動や発言と一貫性を保ちたい、一貫性がある人だと思われたい、と思う
- 行動決定の際に、以前にとった行動を参考にする、同様の行動をとる(どちらも一貫性の原理)
を利用したものです。
「気前がいい人だ」と思われたら、その評価が落ちるようなことをしたくなくなり、もっと気前のよいことをしてしまう、などです。
デートに誘いたい相手に、あえて店を尋ねておくことで、
A:「おすすめのお店おしえてもらえないかな?」
B:「いいよ!」
A:「できれば一緒に行ってもらえないかな?」
B:「(おすすめしたの自分だし)いいよ」
のように、約束をとりつけることができるわけです。
(おすすめしたの自分だし)というのが地味に重要で、
断ると「おすすめしてるのに自分は行きたがらない」という評価につながるので、
一貫性を保とうとする心理が働き、断りづらい状態になる、というものですね。
まとめ
今回紹介した、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」は、
セールスマンが扉に足を差し込み、会話しながら扉を開かせ、最終的には購買契約まで結びつけてしまう様子
から名付けられたものです。
最初はそんなつもりはなく、軽く応対しただけだったのに、いつの間にか向こうの都合のいいように流されていたり、
場合によっては、それが自分が自らの意志で選択、決定したものだと思い込まされていたり。
心理術を巧みに操り、承諾誘導を行う人々は案外世の中に溢れています。
そういう人々にだまされないようにするとともに、そのテクニックを自分の生活のために役立てていけるとよいですね。
次回は、今回の「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」とイメージが類似していて、よく混同される
「ローボール・テクニック」を紹介しようとおもいます。